仙台三題噺「定禅寺通」「伊達政宗」「腕時計」

どうも!仙台つーしんのバラサです!!

先週の月曜日に仙台三題噺という記事を載せました。

振り返りですが、三題噺とは与えられた3つの言葉を使って短い物語を書くというものです。

先週は、「錦町公園」「笹かまぼこ」「化粧水」という言葉を使って物語を書いてみましたが、

今週は「定禅寺通」「伊達政宗」「腕時計」という言葉を使って書いてみました!

それではどうぞ!

 

「定禅寺通」「伊達政宗」「腕時計」

「私思うんですけど、伊達政宗像って定禅寺通にあった方が良いと思うんですよね」

僕はふと、渡辺さんのその言葉を思い出した。僕は腕時計に目をやった。時計の針は1836を指していた。まだ間に合うだろうか。

大学受験も終わり、今日は久しぶりの登校だった。登校といっても卒業式の練習だけ。僕は東京の大学に進学することが決まっていて、今日は早く帰ってネットで春から住む家を探したいと思っていた。放課後、僕は誰よりも早く教室を出た。そして校舎の玄関で下駄箱を開けると、そこに手紙が入っているのを見つけた。その手紙には、「伝えたいことがあります。良かったら、今日の1800に伊達政宗像の前に来てくれませんか?」と書かれていた。

僕はその手紙を見つけたとき、思わず周囲を見渡した。どうせ誰かのいたずらで、僕の反応を面白がってるに違いない。

でも、周りには僕以外まだ誰もいなかった。僕が早く教室を出たので、もう少ししたら誰かが様子を見に来るかもしれないとも思ったけれど、それらしき人は誰も来なかった。僕は腕時計に目をやった。時計の針は1427を指していた。

僕は悩んだ結果、図書室に行って時間をつぶしてから青葉城址まで自転車で登った。今日は2月にしては暖かい1日だった。坂道を一気に駆け登り、伊達政宗像にたどり着いた時には汗だくになっていた。陸上部の現役時代ならもっと楽に登れたはずなのに。体力の衰えを感じずにはいられなかった。「まったく、何でこんなところなんだよ」と僕は思った。僕は腕時計に目をやった。時計の針は1742を指していた。

僕は伊達政宗像の前で待ち続けたけれど、1800を過ぎても誰も現れなかった。「やっぱりいたずらだったんだろうか」と思いながらも、高校生活最後の青春らしき状況がやっぱり嬉しくて、僕はもう少し待ってみることにした。

渡辺さんは、陸上部の1つ下の後輩で、僕と同じハードルを専門にしていた。ハードルを専門にしているのは僕と渡辺さんの2人だけで、毎日一緒に練習をしていた。渡辺さんはとても練習熱心で、僕が毎日自主的に朝練をしているのにも付き合ってくれた。僕は大した成績を残すことができなかったけれど、そんな練習熱心な渡辺さんの力になりたいと思った。だから、引退後も陸上競技の雑誌や本をたくさん読んで、僕は彼女の練習メニューをつくり続けたし、1人で朝練をさせるのは可哀そうだと思って12月までは一緒に朝練を続けていた。

12月になるとさすがにもう朝の時間も勉強に充てなくちゃダメだと思い、「今年いっぱいで朝練もやめるよ」と僕は渡辺さんに告げた。「じゃあ最後にお礼させてください」と渡辺さんは言い、週末に二人で定禅寺通のカフェでご飯を食べた。店を出て、定禅寺通を歩いているときに渡辺さんは「私思うんですけど、伊達政宗像って定禅寺通にあった方が良いと思うんですよね」と言った。その時の渡辺さんの笑顔を、僕はよく覚えている。

僕は渡辺さんのその言葉を思い出すと、急いで自転車にまたがり、定禅寺通へと向かった。もうすっかり日は暮れていて、昼間の暖かさとは一転、まだ冬の寒さがあった。青葉城址から坂を下っていると、風がとても冷たく、体の芯まで冷えるように感じた。

あのとき渡辺さんはこうも言っていた。

「私は定禅寺通が仙台で一番きれいなところだと思うんですけど、恋人同士で『伊達政宗像前で待ち合わせしよう』って言ったら、それが例えば雪の舞う定禅寺通の方が凄い素敵じゃないですか?だから、もし私に恋人ができたら、『伊達政宗像前で待ち合わせしよう』って言って、ここで待ち合わせするんです。そしたら、なんだか2人だけの秘密みたいで素敵じゃないですか?」

自転車で大町西公園駅の脇を過ぎた頃、急に寒さが増してきて雪が降ってきた。僕は腕時計に目をやった。時計の針は1851を指していた。まもなく約束の時間から1時間が経つ。

僕は渡辺さんのことが好きだ。練習熱心で、真面目な良い子だってのは入部当初から思っていた。でもその感情は、いつも2人で練習を続けるうちに、いつしか違ったものになっていったのだと思う。僕が渡辺さんを好きだと気付いたのは、僕が朝練に行くのを辞めてからだった。センター試験も終わったある日ふと気が付くと、どうやったらまた渡辺さんに会えるだろうかと考えている自分がいた。けれども、気づいた時にはもう、東京の大学に願書を出していた。そして、幸か不幸か、僕はその大学に受かることができた。今更、僕にできることはないと思っていた。

どうして僕はあの手紙を見たとき、その言葉を思い出すことができなかったんだろうか。あれだけ、渡辺さんに会いたいと思っていたはずなのに。僕は全力で自転車をこぎ続け、ようやく定禅寺通までたどり着いた。そこには、寒そうに両手に息を吹きかける渡辺さんの姿があった。僕は自転車をベンチに立てかけ、息を切らしながら渡辺さんに駆け寄った。渡辺さんは僕の姿に気づくと、「あっ」と声を上げた。その両目にはすでに涙の跡が見えた。

「なんていうかさ、僕だから分かったものの、普通わかんないからね」

僕は、息をハアハア言わせながらそう言った。

「だって・・・。もし、先輩が私のことを想ってくれてたらきっと伝わるだろうし、もしそうじゃなかったら誰の手紙か分かんなくて終わると思って・・・。分かりづらいかもしれないですけど、これが私の精一杯なんです」

渡辺さんは下を俯き、今にも泣きだしそうな声でそう言った。そして、一瞬の間の後に渡辺さんは顔を上げ、僕らは真っ直ぐに見つめ合う形になった。

「先輩、私・・・」

「僕は渡辺さんが好きです」

渡辺さんの言葉をさえぎって僕はそう言った。

「えっ・・・?」

「だから、僕は渡辺さんが好きなんです。さっき渡辺さんの言葉を思い出して、きっとここで待ってくれてるはずだと思ってここまで来て、今言わなきゃきっとずっと言えないと思うから言います。僕は、渡辺さんが好きです」

僕がそう言うと、渡辺さんは目にいっぱいの涙を浮かべ、僕の胸に飛び込んできた。僕は、両手を彼女の背中に回した。空には雪が舞っていたけれど、僕の心はとても温かかった。

「私も、先輩のことが大好きです!」

渡辺さんはそう言うと、僕の背中に両手を回した。僕はそれに応えるように、彼女のことをギュッと強く抱きしめた。

ふと、自分の腕時計が目に入った。けれども、涙で視界が霞んでしまい、時計の針がどこを指しているのかは分からなかった。僕は東京に行ってから渡辺さんとうまくやれるだろうかとか、僕はちゃんと渡辺さんを大切にできるだろうかとか、不安が一瞬頭をよぎった。でも今だけは、時を忘れてこのままでいたい。

 


 

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