仙台三題噺「七北田公園」「牛タンジャーキー」「クジラ」

どうも!仙台つーしんのバラサです!

2週間前から始めた新シリーズですが、先週木曜の「一番町」「羽生結弦」「ミネラルウォーター」が思ったより多く見て貰えて嬉しいです!

何かのきっかけで有名になってたくさんの人に読んでもらえたら嬉しいです~

先週は2つ公開しましたが、これから毎週月曜の朝6時に公開していこうと思います!

それでは、今週のお話をどうぞ!

 

「七北田公園」「牛タンジャーキー」「クジラ」

 

「ねえ、知ってる?黒いクジラに会えると、願いが叶うんだって」

「えっ?でもクジラって黒くない?」

「うん。そうなんだけど、そのクジラはホント暗闇みたいに全身真っ黒なんだって」

「へぇ~。で、そのクジラはどこで見れんの?」

「それが、誰も見たことがないんだって」

「何それ(笑)訳分かんないじゃん(笑)」

僕はその会話を金曜の終電で聞いた。見るからに女子高生らしき2人組だった。何でこんな時間に女子高生がいるんだと、つい会話に耳を傾けてしまった。その時僕は先輩に連れられて居酒屋、カラオケ、ラーメン屋をはしごしてきた後でずいぶん酔っぱらっていたのだけど、朦朧とした意識の中で、不思議とその会話だけは記憶に残っている。

その夜、夢の中に黒いクジラが現れた。夢の中で、僕は気づくと七北田公園にある噴水の前にいた。黒いクジラはその噴水の上に浮いていた。「やあ」と、その黒いクジラは言った。そのクジラは暗闇のように真っ黒で、まるで宙に影が浮かんでいるように見えた。僕は、黒いクジラなんて本当にいたんだと思った。

「違うよ」とクジラはまるで僕の心を読んだかのように言った。「僕は君の想像の産物だよ。君が願いを叶えたいと思ったから、僕はこうして生まれたんだよ」とクジラは言った。

願い?僕はいったい何を願っているっていうんだ?

「でも、僕には願いなんて何もないよ」

「違うよ。君は確かに願っているよ。その証拠に、君の右手を見てごらんよ」

クジラの言う通り、僕は自分の右手に目をやった。いつの間にか僕の右手には、牛タンジャーキーが握られていた。

「牛タンジャーキー?僕は牛タンジャーキーが欲しかったのか?」

「違うよ。その牛タンジャーキーは、あくまで本当に君の欲しいモノを象徴しているんだよ」

「何だよ、それ。どうせなら直接欲しいものをくれたって良いじゃないか」

「違うよ」とクジラは言った。どうやら、「違うよ」と言うのがクジラの口癖らしい。

「僕をつくったのは君なんだよ。僕が願ったものを象徴するモノしか出せないのも、君が黒いクジラはそういうものだと考えたからなんだよ。でも考えてごらんよ。その牛タンジャーキーは君の願いを象徴しているんだよ」

そして僕はふと、長嶋さんのことを思い出した。高2の冬、長嶋さんと席が隣になった。僕はほとんど長嶋さんと話したことがなかったけれど、あるとき僕が牛タンジャーキーを食べていると「ねえねえ、その牛タンジャーキー、私にもひとつちょうだいよ」と聞かれたことがある。僕はとっさに、「やだよ。そんなの」と返事した。すると、長嶋さんは「え~。ケチ~」と言った。僕は別に、牛タンジャーキーくらいあげても良いと思った。でも、何故かは分からないけれど、とっさにそう返してしまったのだ。僕は、自分のそういう矮小さがとても嫌だった。僕は、そんなときにさっと牛タンジャーキーを渡せるような優しさが欲しかったのだ。

「ありがとう、黒いクジラ。僕は確かに牛タンジャーキーを必要としていた。これからは、さっと牛タンジャーキーを渡せる男になれると思うよ」

僕がそう言うと、クジラは七北田公園の噴水の中に吸い込まれていった。後には、黒いクジラなんて始めからいなかったかのように何も残らなかった。

目が覚めても、その夢は頭の中にリアルに残った。そして、不思議なことに僕の右手には牛タンジャーキーの入った袋が握られていた。

考えれば考える程不思議な夢だった。だって、僕が高2のときクラスに長嶋なんて人はいなかったし、誰かから「ねえねえ、その牛タンジャーキー、私にもひとつちょうだいよ」と聞かれた記憶なんてない。昨日飲みすぎてしまったせいで、こんな変な夢を見てしまったのだろうと思った。

じゃあ何で僕は牛タンジャーキーの袋を持っているんだろうと昨日の記憶をたどり、帰りにコンビニで急に牛タンジャーキーが食べたくなって買ってきたのだと思い出した。きっと、牛タンジャーキーを食べようとしてそのまま眠ってしまったのだろう。

時計を見ると、もう11時を回っていた。頭もガンガンする。やはり、飲みすぎたのかもしれない。僕は水を飲もうと立ち上がった。でも、まあせっかくだしとりあえず牛タンジャーキーでも食べるか。僕は牛タンジャーキーの入った袋を開けた。

 

ピンポーン

 

そのとき、チャイムがなった。僕は玄関に行き、ドアを開けた。

「あの~、すみません。今日、隣に越してきた長嶋と申します。これからよろしくお願いします」

そこには、夢で見た女性が立っていた。僕は唖然とした。その女性も、僕のことを見て唖然としているように見えた。

「・・・あの、こんなこと突然言うのも変だと思うんですけど、ちょうどついさっき、牛タンジャーキーがどうしても食べたくなったところなんです。なんだか凄い、こんな偶然もあるんだなって」

その女性は僕の右手を見ながらそう言った。僕の右手には、牛タンジャーキーの入った袋があった。

「あの・・・良かったら食べますか?」

僕は袋から牛タンジャーキーを取り出し、それをさっと差し出した。

 


 

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