仙台三題噺「EKITUZI」「マーボー焼きそば」「スニーカー」

 

どうも!仙台つーしんのバラサです!

今週も仙台三題噺を書いてみました。

毎回同じような話では詰まらないので、ちょっと違う感じに書いてみたので面白いと思ってもらえたら嬉しいです。

それでは今回のお話をどうぞ!

 

EKITUZI」「マーボー焼きそば」「スニーカー」

 

最高の目覚めでした。

今日は3月24日の土曜日です。仕事は休みだったけど、6:30過ぎに目が覚めました。私はいてもたってもいられなくてベッドから抜け出して、カーテンを開けました。もう日は出ていて、日差しがとてもまぶしく感じました。「春だ」って思いました。それからシャワーを浴びて、食パンを1枚食べ、掃除、洗濯をして、身支度をしてから、もう一度昨日届いた手紙を開いたんです。

昨日仕事から家に帰るとポストに手紙が届いてました。先輩からの手紙でした。思わずキャーって叫んじゃいました。だって、まさか先輩から手紙が来るなんて思いもしないじゃないですか。私は天にも昇る想いってきっとこういうことを言うんだろうなって思いました。

先輩に手紙を書こうって決めたのは去年の夏でした。森見登美彦の「恋文の技術」を読んだのがきったけです。私もこの本みたいに恋文が書きたいと思いました。でも、人に手紙なんて書いたことがないから、この本みたいに計画的にやらなくちゃと思いました。だから友達の誕生日が来るたびに手紙を送って、手紙を書く練習をすることにしました。手紙には今までその友達に伝えられずにいた感謝の気持ちなんかを書いてみました。今はもう、何を書いたかよく覚えてないんですけど、皆にちゃんと気持ちが伝わってれば良いなって思います。

手紙を書こうと思ったのは一番は先輩に手紙を送れるようになりたかったからなんですけど、ほんとうはそれだけじゃありません。私は寂しかったんです。大学を卒業して、全国転勤の会社に就職したら、配属になった場所は一度も行ったことのない仙台でした。初めての一人暮らし。知ってる人は誰もいない。しかも、同期はみんな違う事業所に配属。一番年の近い先輩は10個上。アパートと会社を往復するだけの毎日。休みの日は家事をするだけで終わってしまいます。そもそも、仕事で疲れて何をする気力もありませんでした。ある日曜日の夕方、一人でサザエさんを見ているとなんだか無性に泣きたくなったこともあります。「そうか、これがサザエさんシンドロームか」って思いました。でも、そんな気持ちを伝える相手もいません。それがなんだか、私を余計に寂しい気持ちにさせました。

手紙を書き始めたのは去年の9月頃です。住所は部活のOB会の名簿で調べました。手紙を書くペースはだいたい1月に1人くらいです。皆、手紙が届くとLINEでメッセージをくれました。手紙を貰ってすごく嬉しいとか、そんなことです。もちろんそう言ってくれるのは嬉しかったですけど、ほんとは手紙で返事をくれるのを期待してました。手紙を送るのは手紙を貰いたいからなのに、皆分かってないです。ひと月前に先輩へ手紙を送るまで、結局5人に手紙を送りました。でも返事をくれたのは1人もいません。私はそのことで結構深く落ち込みました。でもまあ、きっとそんなものなのかもしれませんね。

そんなんだったから、むしろあまり気負わずに先輩に手紙を書くことができたんです。どうせ返事なんて貰えない。だったら、書きたいことを書こうじゃないかって。

先輩の手紙にはこんなことを書きました。

お誕生日おめでとうございます。25歳ですね。先輩の25歳がとても楽しいものになることを願ってます。それから、今さらですが学生時代にはとてもお世話になりました。あのとき先輩から優しい言葉を貰ったことを今でもよく覚えています。あれ以来、私も後輩に優しい言葉をかけられる良い先輩になろうってずっと思ってきました。私は今、なかなか仕事に慣れることができずにいますが、いつか後輩が入ったら先輩みたいに優しい先輩になりたいと思ってます。これ、ほんとですよ。仙台には知り合いもいないので、休みの日には何もすることがなくて、よくこうやって誰かに手紙を書いています。本もよく読みます。私は森見登美彦がとても好きです。それから、仙台と言えば先輩の地元ですよね。おすすめのスポットとかあれば是非教えて欲しいです。

本当はもっと長いけど、だいたいそんな内容です。これ以上詳しくは恥ずかしすぎて死んじゃうので勘弁してください。それで、先輩は私のLINEを知ってるはずなんですけど、手紙を送ってから何日経っても連絡はありませんでした。きっとそうだろうとは思ってましたけど、でもほんとに何も連絡がないと思うとすごく悲しい気持ちになりました。

でも先輩はちゃんと手紙をくれました。やっぱり先輩は違います。疑ってごめんなさいって謝りたいです。

手紙にはこう書かれてました。

「手紙ありがとう。仕事から家に帰って、ああ今年も誕生日は一人寂しく過ごすのかと思って家のドアを開けたらポストに堀さんからの手紙が入っていました。とても嬉しい気持ちになりました。堀さんから手紙を貰って、堀さんが仙台に住んでいることを初めて知りました。そうと知っていれば、この前帰省した時に連絡をしたんだけど。

堀さんが手紙の中で書いてくれた出来事だけど、僕はたいしたことを言ったわけでもないのに堀さんはあのときとても喜んでくれていて、堀さんはきっと心のキレイな人なんだろうと思ったのをよく覚えています。本当に僕が言ったことがきっかけで、“良い先輩になろう”って思ってくれているのなら、こんなに嬉しいことはありません。それから、堀さんの手紙を読んで、なんだか堀さんが毎日を辛く過ごしているように感じました。僕の勘違いなら良いんですけど。実は、僕も社会人1年目は仕事に慣れることができずに、しかも誰も知り合いのいない札幌に配属で、いろいろと辛い時期がありました。それで、僕も知り合いに手紙を書いて送った時期があったんですよ。でも、手紙を書いても返事をくれる人ってほとんどいないですよね。だから僕は手紙で返事を書こうと思いました。

僕が札幌で暮らし始めてからもう少しで丸3年になります。ようやく仕事にも慣れてきました。堀さんもきっと、そのうち仕事に慣れるときがやってきます。北海道の冬はとても寒いですが、これから春がやってくるんだと感じられる今の季節はとても好きです。北海道の冬が厳しい分、春の訪れはとても心に響きます。今の季節の、ふとした時に気づく日差しの暖かさであったり、日の長さであったりが僕はとても好きです。春の訪れは、辛い出来事にもやがて終わりが来るんだって気持ちにさせてくれます。堀さんも辛いことがあるかもしれないけど、季節が巡れば春はちゃんとやってきます。

堀さんはよく本を読んでるそうですが、僕も休日はよく本を読みます。僕は村上春樹が好きで、「ノルウェイの森」が特に好きです。僕が人に手紙を書くようになったのは、その登場人物がよく手紙を書いてて、それに憧れたからなんです。

それから、仙台のおすすめスポットですね。オーソドックスなところはきっともう知ってると思うので、僕の好きなマーボー焼きそばのお店を紹介します。そのお店のポイントカードを送りますね。ちょうどポイントが溜まってて1回タダで食べられるので是非行ってみてください。年末に帰省したときにも行ったんですが、やっぱり美味しかったです。食べると元気が出てきます。

僕はこれまで10人くらいに手紙を送りました。そのうち、返事をくれたのは2人だけでした。もちろん、みんなメールとかでは返事をくれましたが、手紙で返事をくれたのは2人ということです。その2人とは、今も手紙でやりとりをしています。家に帰ってポストを開けたときに手紙が入っているのは、とても嬉しいものです。手紙を送る相手がいるというのも、とても素晴らしいことです。人に手紙を書いたり、人から手紙を送ってもらったりするのは、今の僕の支えになっています。だから堀さんには、これからも色んな人に手紙を書き続けて欲しいです。きっと、これまで以上に仲良くなれる人がいるはずです。

堀さんにとって仙台は知り合いのいない寂しい街かもしれないけれど、でも仙台はとても良い街ですよ。適度に都会で、適度に自然があって、住むのにはちょうど良い街です。堀さんにも仙台を好きになってもらえると嬉しいです。今度帰省するときは連絡するので、良かったらご飯行きましょう。

2018年3月21日

桜井健史」

私はその手紙を3回繰り返し読んでから外に出ました。なんだか無性に歩きたくなって、北四番丁のアパートから一番町に向かいました。外に出ると春の日差しがとても暖かく感じました。季節は春になっていました。ついこの間まで冬だったのに、確かに春になっていました。「堀さんはきっと心のキレイな人なんだろうと思った」だって。「今度帰省するときは連絡するので、良かったらご飯行きましょう」だって! 嬉しい。嬉しい! 返事を貰えただけで充分なのに。こんな嬉しい言葉を貰えるなんて。しかも、先輩も色んな人に手紙を送ってたなんて、やっぱり先輩は先輩だ。手紙で返事が欲しいって、ちゃんと分かってた。空には雲一つないキレイな青空が広がってる。定禅寺通のケヤキ並木がとても輝いてる。一番町のアーケードも、なんだか私を歓迎してくれているみたい。仙台はなんて素敵な街なんだろう。とにかく、私の目にはすべてが輝いて見えました。

アーケードをずっと歩いていると、野中神社の旗が目に入りました。そういえばこの前、野中神社は縁結びの神様を祭ってるってやってました。アーケードから1本路地に入ったところに野中神社はありました。こんなところに神社があるなんて、今まで全然知りませんでした。仙台に住んでもう少しで1年が経つけど、私はまだまだ仙台のことを知らないみたいです。これからもっともっと、仙台を知っていきたいです。先輩の育った街を、もっと知りたいと思います。お賽銭には思い切って500円玉を入れてみました。これから先輩との距離がもっと縮まりますように。うまくいきますようにって、長い時間をかけてお祈りしました。

それから、新しいスニーカーを買いました。春らしく真っ白なスニーカーです。季節は春なんだから、仙台の色んなところを歩いてみたいと思います。私はさっそくタグを切って、そのスニーカーに履き替えてみました。先輩が見たら、なんて言ってくれるかな。鏡を見ながらそんなことを考えてしまいました。頭の中は先輩のことばっかりです。それから、本屋さんに入って「ノルウェイの森」を買いました。私も「ノルウェイの森」を読んだら手紙が書きたくなりましたって、そうやって手紙を書いても良いかな。わざとらしいかな。「ノルウェイの森」を読んでホントにそう思えたら、書いても大丈夫かな。そもそも、手紙の返事を書くタイミングってどのくらいが良いんでしょうか。1週間後? 1か月後? どのくらいが一番自然なんでしょう。早いほうが良いのかな。時間があいたほうが良いのかな。もしかして、返事を書くこと自体が不自然なのかな。そんなことを考えながら歩いてたら、先輩に教えてもらったお店に到着しました。もちろん、マーボー焼きそばを食べました。入り口に新仙台名物って旗が立ってましたが、マーボー焼きそばってものがあるのを先輩の手紙で初めて知りました。どんな料理なんだろうってわくわくしながら待ってると、出てきたそれは名前の通り「焼きそばにマーボー豆腐をかけてみました」って感じです。でも、食べみるとほんとうに美味しいじゃないですか。さすが先輩です。これは確かに元気が出ます。そうだ、マーボー焼きそばのお礼を手紙に書きましょう。それなら自然な気がします。書いても大丈夫な気がします。私は先輩に返事を書く決心がつきました。

それからカフェに入って、3時間くらいかけて「ノルウェイの森」の上巻を読みました。ところどころ難しくてよく分からなかったんですけど、主人公のワタナベ君が見せる恋人の直子への優しさがすごく切ないです。誰かを愛するってこういうことなのかなって思いました。先輩はこの本を読んでどういうことを考えるんでしょうか。下巻も読んだら、何か分かるんでしょうか。「先輩はこの本を読んでどう思ったんですか?」って手紙に書いてみても良いかな。

カフェを出た後は仙台駅の東口にあるEKITUZIに向かいました。先輩に手紙を送った数日後にたまたまEKITUZIの脇を通ったんですが、地面に落書きが書いてあるのを見て面白いなって思って中に入って何が書いてあるのか見てみたんです。アニメのキャラクターとか、アイスクリームの絵の中に混じって、相合傘が描かれてるのが目に入りました。なんとなく、片思いしてる女の子が描いたのかなって感じでした。それを見て私もこっそり相合傘を描きました。先輩の名前と、私の名前を並べて。どうか、先輩から返事が来ますようにって気持ちを込めて。それでほんとうに返事が来たんだから、ちゃんとお礼をしないといけません。だから、「ここに好きな人との相合傘を書いたら、距離が少し縮まりました。ありがとうございました」って黒板に書きました。そしたら何だかとても気分が良くなって、加えて何か書きたいなって思いました。

「春は短し恋せよ乙女!」

私は森見登美彦の「夜は短し歩けよ乙女」を真似てそんな言葉を書いちゃいました。いや、自分でもなんて恥ずかしいことを書いちゃったんだろうって思ってます。

そこでふと日差しが暖かいなって思いました。腕時計に目をやると、もう4時半です。ずいぶん日が長くなったみたいです。

「春だ」

私は思いました。春です。春がやってきたんです!

 


 

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