仙台三題噺「ハピナ名掛丁」「ずんだ餅」「間接照明」

 

どうも!仙台つーしんのバラサです!

ここ1か月ほど記事を書くのをお休みしていましたが、今日からまた書いていきたいと思います!

それで今回は仙台三題噺を書いていきたいと思います。

改めて説明ですが、三題噺というのは与えられた3つの言葉を使って短い物語を書くというものです。

それで、実際に仙台にある場所、仙台名物、その他1つの言葉を使って仙台三題噺というシリーズをこれまで10回くらいお送りしていました。

これまでの三題噺はこの記事の一番下にリンクを貼っています。

それでは今回の話をどうぞ!

 

「ハピナ名掛丁」「ずんだ餅」「間接照明」

その時、僕はずんだ餅を食べながらペデストリアンデッキを歩いていた。そこに、向こうから一人の女の子が小走りで近づいてきた。それは環奈だということが僕にはすぐに分かった。環奈は僕に近づくと「せ~んぱい! こんなところで何してるんですか? 先輩の姿を見つけて思わず走ってきちゃいました!」と言った。

僕はその環奈の言い方があまりにも可愛くて、思わず顔がにやけるのをこらえられなかった。こんなところで環奈に会えるなんて、なんてツイてるんだろうと思った。でも、僕は自分のそんな気持ちを環奈には気づかれまいと「よう」とだけ言い、にやけ顔を誤魔化すようにプラスチックのカップに入っているちいさなずんだ餅を楊枝で刺して口に運んだ。

「あっ、そのずんだ餅この前テレビでやってたやつですよね? 私にも一つ下さい!」

環奈はそう言うと、僕の手から楊枝を取り、ずんだ餅に楊枝を刺して口に運んだ。そして、「美味しい~! 私もこれ食べたかったんですよね~!」と言った。それからその楊枝を僕に返すと、今度は僕の顔を覗き込むようにして「で、ところで先輩は何してたんですか?」と言った。

僕は「明日母親の誕生日なんだけど、プレゼントを買いに来たんだよね」と言いながら、環奈から返された楊枝を見つめた。カップの中にはまだ何個かずんだ餅が入っているけれど、自分がその楊枝を使うことを考えると、なんだかものすごくむず痒いように感じた。

「そうなんですか? 先輩って意外にそういうのちゃんとしてるんですね!」

「意外にってなんだよ。そりゃあ誕生日プレゼントくらい僕もちゃんと買うよ」

「へ~。あっ、ちなみに私の誕生日は726日なんで、プレゼントお待ちしてますね!」

「そうなの? まあ、覚えてたらチョコの1個くらいはプレゼントするよ」

僕は、環奈はいったいどんなプレゼントが欲しいんだろうと思いながらも、ついそんな素っ気ないことを言ってしまった。そうか、環奈の誕生日は726日なのか。ちゃんと覚えておかなくちゃ。

環奈は「え~、もっといいモノくださいよ~。私、今スマホケース欲しいんですよね~」と無邪気に笑いながら答えた。僕にはそんな環奈の様子が可愛くて仕方なかった。

「まあ、そんなことより、プレゼントは何にするか決めたんですか?」

「それがさ、プレゼントなんて何が良いか分かんないから、直接母親に聞いたんだよね。『なんか欲しいものとかある?』って。そしたら、『夜寝る前に読書するための間接照明が欲しい』って言われたんだけど、そんなのどこで売ってんのか全然分かんなくて困ってたんだよ」

「ふ~ん。なんだかステキなお母さんですね。寝る前に読書するなんて。私のお母さんなんか、本なんてまったく読まないですよ。まあ、私のお母さんのことはいいんですけど、私良さそうなお店知ってます。良かったら案内しましょうか?」

「ホントに? そうしてくれると凄いたすかるよ。とりあえず仙台駅に来てみたものの、どこ行けば良いか分かんなくて困っててさ。それで、テレビでやってたずんだ餅が目に入って、とりあえず買って食べながら、どうしようかなってさ、考えてたとこだったんだよね。でも、良いの? どこかに行く途中とかじゃなかったの?」

僕はできる限り冷静を装いながらそう言ったけれど、内心では環奈と一緒に街中を歩けるなんて、なんてラッキーなんだろう、どうか予定なんて何もないと言ってくれと願っていた。そして、僕の願いが通じたのか、環奈は「大丈夫です。午前中だけ塾の講義があって、ちょうど今から帰るところだったんです。どうせ帰ってもやることないし、せっかくなんで私も一緒に行かせてください」と言った。

僕は心の中でガッツポーズをしながら、「ホントに? なんか悪いね」と言った。そして、右手に持ったずんだ餅の入ったカップに目をやり、「良かったらお礼に残りのずんだ餅あげるよ。あとちょっとしかないけどさ」と言ってそれを渡した。

「ホントですか!? さっきもらってすごく美味しいなって思ってたんですよ。嬉しい~。ありがとうございます!」

環奈はそう言い、さっそくカップの中のずんだ餅にさっきの楊枝を刺し、それをまた口に運んだ。「ん~、やっぱり美味しい~」と言う環奈の様子を見ながら、僕はちょっともったいないことをしちゃったようにも思った。

「それで、そのお店ってどこにあるの?」

「あっ、そうですよね。えっとですね。アーケードをずっとまっすぐ行って、道をいっこ入ったとこなんですけど・・・ まあとりあえず行きましょう」

そうして僕らはペデストリアンデッキからエスカレーターを降りてハピナ名掛丁に入った。そこには小さな人だかりができていて、何かのキャンペーンをやっているようだった。どうやらそれは、全編仙台でロケを行った映画のキャンペーンで、インスタグラムのフレームに入って写真を撮って、それをインスタグラムにアップした人はくじ引きを引けるというものだった。

「あっ! 見てくださいよあのスマホケース、めっちゃ可愛くないですか? 私、この原作のマンガ大好きなんですよね! ちょうどスマホケース壊れちゃって買おうと思ってたし。良いな~。欲しいな~」

環奈がくじ引きの景品が並べられた棚を指さしてそう言ったから、僕は「写真をインスタにアップすればくじが引けるみたいだからさ、写真とってあげるよ」と言った。

僕はスタッフに近づいて声をかけようとした。するとちょうどそのとき、スタッフが道行く人たちに大きな声でキャンペーンの内容を説明し始めた。

「このキャンペーンは映画の内容にちなんで、恋人らしい写真を撮ってインスタグラムにハッシュタグと映画名を付けて投稿していただいた方にくじ引きにご参加いただけます。ここでしか手に入らない限定商品もございますので、皆さま是非ご参加ください!」

その説明を聞いた環奈は「な~んだ、残念。あ~あ、すごく欲しかったんだけどな~」と言った。僕はその様子をみて、環奈は本当にそのスマホケースを欲しがっているように思った。ちょうどついさっき、スマホケースが欲しいとも言ってたし、なんとかして環奈にそのスマホケースをあげられたら良いのにと思った。

だから僕は、勇気を出して「・・・僕で良かったら、一緒に写真撮っても良いよ? いや、環奈がほんとうに欲しがってるように見えたからさ。限定って言ってたし。せっかくだし」と言った。

すると環奈は「ホントですか!? でも先輩にそんなことしてもらうのはなんだか悪いです。・・・でも、ホントに欲しいので、もし先輩がイヤじゃなかったら、ホントにお願いしちゃっても良いですか?」と答えてくれた。

そして僕はスタッフに声をかけ、自分たちもキャンペーンに参加したいと伝えた。環奈がスマホをスタッフに渡し、インスタのフレームを受け取ろうとすると、「彼氏さんのスマホでも撮りましょうか?」と聞かれた。僕は、恋人のふりしてるのがバレてもいけないしな、と自分に言い訳をして「そ、そうですよね。お願いします」と言ってスマホを渡し、代わりにインスタのフレームを受け取った。そして2人で並んでそれを持った。

「じゃあ、何か恋人らしいポーズをお願いします! あっ、彼女さんが持ってるのってずんだ餅ですか? それを彼氏さんにあーんして食べさせるのはどうですか?」

スタッフがそう言うと、僕はビックリして恐る恐る環奈の顔を見た。環奈もびっくりした顔で僕を見ていた。一瞬の沈黙があったけど、僕が小さく頷くと、環奈も僕を見ながら小さく頷いた。そして環奈はフレームから手を放し、手に持っていたカップの中にあるずんだ餅に楊枝を刺して「せ、先輩、すみません、失礼します」と言ってそれを僕の口の方に運んだ。僕はそれに合わせて口を大きくあけるポーズをとった。そんな状況に、僕の頭の中はほとんど真っ白になっていた。

「あ~、良いですね~。じゃあ撮りますよ。ハイ、チーズ!」

スタッフはそう言って環奈のスマホで写真を撮り、今度は僕のスマホを手にした。そして「じゃあ、彼氏さんのスマホでは食べたところの写真を撮りましょう」と言った。その言葉に、僕はとっさに目の前にあったずんだ餅をパクリと口にした。そしてその瞬間を写真に撮られた。スタッフは微笑ましそうに「良い笑顔ですね~」と言って笑顔を見せたけれど、僕は恥ずかしくて環奈のことがまともに見られなくなった。

「先輩、なんだかすみません。こんなことにつき合わせちゃって」と環奈が言った。

僕は環奈に顔を向けないようにしながら「い、いいよ、こんくらい。スマホケース、当たると良いね」と返した。

僕らが小さな声でそんなやりとりをしていると、「それではインスタにアップして、その画面を提示してくださいね」と声をかけられた。環奈がスマホを操作して、それをスタッフに見せると「ありがとうございます。それではくじ引きをどうぞ」という言葉に続いて、小さな声で「頑張ってくださいね!」と環奈に声をかけているのが聞こえた。今更だけど、環奈は僕との写真をインスタにあげるのに抵抗はなかったんだろうか。

環奈がくじ引きのガラガラを回しているあいだ、僕はスタッフに返された自分のスマホを見た。そこには、変な方向を向いてしまってガチガチに固まっている自分の姿と、満面の笑みを浮かべた環奈が写っていた。環奈は僕がずんだ餅を食べる様子を見て、なんだかとても嬉しそうに笑っている。いや、それはもちろん僕の勘違いかもしれないけれど、そこに写る環奈の笑顔は、本当に嬉しそうだった。

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は実在のものとは関係ありません。

 


 

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