仙台三題噺「北仙台」「仙台四郎」「風呂」

どうも!仙台つーしんのバラサです!

この前これまでの仙台三題噺の閲覧数を見てみたら、自分でうまく書けたと思ったのがあんまり見られてなくて、いまいちだなって思ってたのが結構見られてたりして、よく分からないなあと思いました。

今回は、なんとなくたくさん見られてた奴の雰囲気の話を書こうと思ったら結局全然違う感じになっちゃいました。

とにかく、今回の話をどうぞ!

「北仙台」「仙台四郎」「風呂」

北仙台に行けば何かを思いつくかもしれない。昨日、風呂に入っているときにふとそう思った。だから今日は朝起きるとさっそくJRに乗って北仙台駅までやってきた。そして駅から外に出ると駅前の様子を眺めた。北仙台に着いたのは朝の8時前で、駅前はちょうど通勤や通学の人たちで混雑している。なんとなく、人通りの少ない方向へ行ってみることにした。

何のあてもなく歩みを進めていると、自分が青葉神社に向かっていることに気が付いた。そう気づいたとき、「神様なんておらへんで」という酒井の言葉を思い出した。僕が酒井からその言葉を聞いたのは、同級生の結婚式でのことだった。

「結婚式って、神様に愛を誓うやろ? 俺、あれ嫌いやねん。誓うなら自分に誓うか、相手に誓うか、それでええんちゃうか? なあ高本、神様なんておらへんで。俺には分かるんや」

あの時酒井がなんで僕にそんな話をしたのかは分からない。でもきっと、酒井には神様なんていないと思わずにはいられないような経験があったんだろうと思った。そしてそのとき、酒井は新しく会社をつくろうと思っているという話を僕にした。酒井は就職してから5年間大阪の会社で働き、その仕事を辞めてちょうど仙台に帰って来たところだった。大阪に住んでいたせいなのかどうかは分からないけれど、久しぶりに会った酒井はエセ関西弁を話すようになっていた。酒井は、大阪では外国人向けのお土産屋が充実しているのに、仙台では外国人向けのお土産が少ないことに目をつけた。仙台のお土産を外国人向けにパッケージすれば売れるはずだと熱弁した。そして酒井はその場で僕にも一緒に会社を手伝って欲しいと言った。僕はちょうど仕事を辞めたいと思っていたし、酒井の熱意に押されたのもあって、とりあえず週末だけ仕事を手伝うことにした。

酒井の会社はあっという間に成長を遂げ、週末にだけ仕事を手伝うのではとても手が回らなくなった。だから僕は仕事を辞めて、酒井との仕事に専念することにした。会社はどんどん成長を続け、気づけば10人の従業員を抱えるまでになった。酒井が社長、僕が専務となり、仙台では知る人ぞ知る注目の会社となった。そして酒井は、仙台の経済界では一目置かれる存在となった。

「でも、何であの時僕のことを誘おうと思ったんだ?」

僕はあるとき酒井に尋ねたことがある。酒井は、「だって、お前の笑ろうた顔、仙台四郎そっくりやもん。こいつと一緒に会社を興せば商売繁盛の神様が俺に味方してくれる思うたんや」と言った。僕は「お前、あのとき『神様なんておらへんで』とか、言ってなかったか?」と言って笑った。酒井は「それとこれとは別やねん。そういう縁起みたいなのを信じるのは商いするのに大切なんや」と言っていた。

その言葉を思い出した僕は通りのビルのガラスに映る自分の顔を見た。そこには、暗い顔をした自分の顔が映っていた。とても仙台四郎のようには見えない。これじゃあ、商売繁盛の神様が僕に味方しないわけだ。僕は無理に笑おうとしてみたけれど、そこには歪んだ笑みを浮かべる自分が映るだけだった。そこに神様が笑う姿は見えない。

酒井は、人を見る目があったのだと思う。酒井は僕を誘った理由を「仙台四郎と似ているから」なんて言ったけれど、本当は別にあったんじゃないかと思う。僕に対して、何か感じるものがあったんだろう。僕は、酒井のやりたいことを理解して、それを実行するために必要な作業を整理することに長けていた。従業員が増えれば、社内の規則を整備したり、従業員同士が気持ち良く働けるような雰囲気づくりをするのも得意だった。酒井はいつも外に出ていて、新しい商談をまとめたり、どこから見つけてくるのか優秀な人間を見つけては自分の会社へと引っ張ってきた。

始めはデパートの一角やイベントスペースを借りて小さく商品を売るだけだったけれど、やがてアーケード内に小さいながらも店舗を構え、ネットでの販売も始めるようになった。そうしていくうちに、いつしかそんな僕らを真似する業者が出るようにもなった。

「所詮うちらの商売は誰でも真似られる程度のもんや。今のうちに仙台での地位を築いて他の業者がうちらに立ち向かおうと思われへんようにせんとあかん」

僕は酒井のその言葉を受け、仙台駅近くでテナントを募集していビルを探した。そして賃料は高いものの立地条件が最高なスペースを見つけた。酒井と相談した結果そこにこれまでよりも大規模な店舗を構えることになった。僕はいくつかの銀行を回って事業資金を借り入れ、有名なデザイナーに内装をデザインしてもらい、かなり大規模な宣伝も行った。それはそれまでの自分たちの規模からするとかなり大規模な投資だったし、失敗してしまえば会社が立ちいかなくなることは容易に想像ができた。なんとしても成功しなければならなかった。

ところが新店舗オープン1週間前、酒井は突然姿を消した。何の前触れもなかったし、理由も思いつかなかった。僕は、酒井はいつものようにまた新しい何かを思いついてそれに夢中になっているだけなんだろうと思った。いずれ、連絡が来るに違いない。僕が今すべきことは新店舗を成功させることで、酒井のことは気にしてはいけないのだと思った。僕は酒井が新店舗でしようとしていたことを全て理解していたし、酒井がいなくても自分一人で何とかできるという自信があった。

けれども、酒井はいつまで経っても帰って来なかった。ひとつの連絡もなかった。悪いことは重なるもので、新店舗での売り上げは計画の半分にも満たない日々が続いた。社内は暗い雰囲気に包まれた。

「やっぱり、酒井社長がいないとダメなんだよ。高本専務じゃちょっと・・・」

ある日社員がそんな話をしているのを耳にしてしまった。なんとかしないといけない、僕は自分にそう言い続けた。

僕は酒井の考えを完全に理解している自信があった。あとはそれを実行に移すだけなんだ。酒井がしようとしていることに間違いはないはずだ。今はうまくいっていないけれど、やるべきことを続けていけば必ず盛り返すことができるはず。僕はそう信じていた。

しかし、業績は相変わらず上がらなかった。社内の雰囲気は最悪で、従来行っていた事業の業績まで下がっていった。酒井からはやはり何の連絡もなかった。そんな中でも毎月銀行への返済を行い、新店舗のテナント料を払う必要があった。僕は、何かが間違っていたのかもしれないと思い始めていた。

僕はそんなことを思い返しながらも、青葉神社へと歩みを続けていた。でも、僕はいったいこんなところで何をしているんだろうか? こんなところに来る前に、もっと他にすべきことがあるんじゃないだろうか? そうは思ったけれど、でも僕はいったい自分が何をすべきなのかが、もう分からなくなってしまった。なあ酒井、お前はいったいどこに行っちまったんだよ。どこで何をしてるんだ。なあ、お願いだから帰ってきてくれよ。僕にはもう、何かにすがるように祈るしかないのかもしれない。

酒井の会社に入って以来、自分には人には無い才能があるのだと気付いた。自分には人にできない多くのことができるし、自分はこの会社の中で酒井に続いて2番目に実力があるのだと思っていた。だから、酒井がいなくなってからは自分が社長のように振舞わなければいけないと思ったし、酒井ほどではないにしても、自分にできることはたくさんあるはずだと信じていた。けれども、それは間違いだったのかもしれない。

僕は確かに酒井のやろうとしていたことを理解していた。でも、考えてみれば酒井自身は自分のやろうとしていることを理解していなかったと思う。酒井は自分のやろうとすることを理解するのではなくて、圧倒的な行動力で物事を進め、その結果を振り返ったときに初めて自分のやろうとしたことを理解するような人間なのだ。僕は酒井のやろうとしていたことを理解していたけれど、僕には酒井のような行動力はない。たとえやるべきことを理解していても、それができないんじゃ何の意味もない。だから、僕が今まで酒井をサポートしてきたように、僕以外の誰かを社長に就任させて、その誰かをサポートした方があるいは良い結果となったかもしれない。僕はずっと、自分をナンバー2だと思ってきたけれど、それは2番目に実力のある人間という意味ではなくて、ナンバー2というポジションが一番ふさわしい人間だった、ということなのかもしれない。でも、今更そんなことを考えてもどうしようもない。もう、どうしようもないんだ。

半年前、僕は涙ながらに新店舗を閉店した。それでも社内に立ち込めた雰囲気はそのまま残った。そして業績は更に下がり続けた。このままいくと、あと2か月もすれば銀行への返済が行えなくなってしまう。僕にはもう、倒産の道しか見えない。

「神様なんておらへんで」

酒井の言葉が頭をよぎる。でも、今の僕には神様に祈るほかどうしようもないんだ。神様、お願いですから、どうか酒井を返してください。お願いです。酒井がいないと、やっぱりダメだったんです。僕は心の中でそう祈る。でも、頭の中では「神様なんておらへんで」という酒井の言葉がぐるぐると回る。なあ酒井、帰ってきてくれよ。僕にはお前がいないとダメなんだ。神様なんていなくてもいいから、お前が必要なんだ。なあ、早く帰って来いよ。

僕の意識は、今にも倒れんばかりに朦朧としていた。朦朧とした意識の中で、それでも僕の体は神様のいる方向へと進み続けるのだった。

 


 

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