仙台三題噺「五色沼」「ケヤキ」「USBメモリ」

どうも!仙台つーしんのバラサです!

仙台三題噺を毎週書いてたら仙台名物のワードを何にするかだんだんネタ切れしてきました!(笑)

誰か教えて下さい!(笑)

 

「五色沼」「ケヤキ」「USBメモリ」

僕がその女性を見つけたのは五色沼でのことだった。何で僕がその女性に気付いたかというと、僕が五色沼の横を通ろうとしたときに急に大きな木が現れたからだ。僕は驚いてその方向を見た。すると、そこでは女性がかがんで何かをしていた。僕は恐る恐るその女性に近づいた。女性に近づくと、何やら画面を操作しているように見えた。よく見るとそれはタブレットか何かではなくて、よくSF映画で出てくるような宙に浮かんだ透明な操作パネルで、まるでタブレットのタッチパネルを操作するかのようにその女性はそれを指で動かしていた。そしてその女性が画面上の何かをタッチすると、またしてもそこに突然大きな木が現れた。

「あの・・・何をしているんですか?」

僕は恐る恐るその女性に尋ねた。その女性は振り返ると不思議そうな顔をして僕を見た。まるで、「私が何をしているかなんて、見れば分かるでしょう?」とでも言いたそうな顔だった。その女性は「ケヤキを植えているんです。見れば分かるでしょう?」と言った。

・・・ケヤキ? 確かに、よく見てみればその木は定禅寺通で見るケヤキによく似ていた。大きさもよく似ている。確かにこれはケヤキなのかもしれない。しかし、こんなに大きなケヤキがいきなり現れるなんて、僕には訳が分からなかった。その女性は何も不思議なことはないという様子を見せているけれど、そもそも宙に透明な画面が浮かんでいること自体訳が分からない。

「ケヤキを植えているって・・・、こんなに大きなケヤキをいきなりつくることなんてできるんですか?」

僕がそう聞くと、その女性は今度は「できるんですか?って、目の前にケヤキが現れているんだからできてることくらい分かるじゃない」とでも言いたそうな顔をした。

「ええ、見ての通り簡単なことよ。定禅寺通にあるケヤキのデータをこのUSBメモリにコピーして、そのデータをここに貼り付けただけだから。私はある人から頼まれて、五色沼が冬にちゃんと氷が張るように、ここにケヤキの木を植えて日陰を増やしているの。何か不思議なことがあるかしら?」

その女性は地面を指さしながらそう言った。そこには確かにUSBメモリが刺さっていた。

「データをコピーって・・・、そんなことできるんですか?」

「簡単よ。あなたもやってみる? このタッチパネルを操作するだけだから。スマホを操作するのと何も変わらないわ」

そうして僕は彼女にそのタッチパネル?の操作方法を教えてもらい、いくつかあるケヤキのデータから一つを選び、そのデータをタッチすると目の前にケヤキが出現した。

「・・・ホントだ。ケヤキって、こんな風にデータ化することができるんですね。そんなこと初めて知りましたよ」

「そうね。もしかしたら一般的にはまだあまり知られてないのかもしれないわね。最近は私みたいな人間がいるって有名になってると思ってたんだけれど。まあ、私みたいに何にでもUSBメモリを差し込むことのできる人間が世の中にほとんどいないのも確かね。あなたは知らなかったのかもしれないけれど、見える人にとって世の中はUSBの差込口で溢れているのよ。もちろん、それはあなたにもある。だからあなたのデータをコピーして、あなたをもう一人つくり出すことだって簡単にできるのよ。試しにやってみる?」

「本当ですか? 怖いけど、でもちょっと気になりますね。お願いしても良いですか?」

僕がそう言うとその女性は僕の脇腹にUSBメモリを差し込んだ。自分の体にUSBメモリを差し込まれたという感触は確かにあるんだけど、不思議と痛くもなんともない。それはとても不思議な感覚だった。僕の脇腹にUSBメモリが差し込まれると、宙にまた透明なタッチパネルが出現した。そしてその女性は先ほどと同様に操作を始めた。

「・・・これで良し、っと。人のデータをコピーするのは少し時間がかかるんだけど、これでできたわ。ちょっと待ってね。・・・ほら、あなたがもう一人できあがったわ」

・・・僕の目の前に、僕が現れた。それは確かに僕自身だった。姿かたちも、着ている服も全て僕と同じだった。自分を外から見ると、僕はとても退屈そうな顔をしているのが分かった。それが自分かと思うと自分が嫌になってしまうほど、そこにいる人物は確かに僕自身だった。

「・・・凄い。本当に僕が現れましたね」

もう一人の僕が言った。そうか、僕が現れる直前の記憶までコピーされているんだ。だから、もう一人の僕は、自分が本当の自分だと思っているんだろう。でも、そこまで同じなんだったら、どっちが本物かなんて、どうやって分かるんだろう?

「どう? すごいでしょ。あなたたちはどちらも自分が本物だって思っているでしょう? 全く同じデータをコピーしているから、あなたたちは全く同じ人間よ。でも、強いて言えばUSBメモリが刺さっているあなたが元データということにはなるわね」

その女性はそう言った。僕は自分の脇腹を見た。・・・僕の脇腹にはUSBメモリがない。代わりに、目の前にいる自分の脇腹にはUSBメモリが刺さっている。僕がコピーなのか? 僕は目まいをするような思いがした。自分がコピーであることの意味が、僕には分からなかった。だって、僕は確かにここにいるし、自分の小さな頃からの記憶も確かにある。・・・もちろん、ナオに振られてしまった記憶だってある。

「データか・・・。訊いてみたいんですけど、僕のデータっていうのは、一つのファイルから形成されているものなんですか? それとも、たくさんのデータが一つのフォルダに集められているようなイメージなんでしょうか?」

「どちらかと言うと後者に近いわね。ただ、人のデータはパソコンで扱うデータとは違っていて、明確に一つ一つのデータを切り分けて考えることはできないの。特に記憶に関するデータはそうね。記憶のデータは一つ一つが密接に関わり合っているから」

「・・・そうなんですね。でも、例えばですけど、記憶のデータを一部だけ消したらどうなるのか、もう一人の自分のデータを使って試すことはできないですかね?」

「それは簡単にできるわよ。どんなデータを消したいのかしら?」

「それは、自分が3年前彼女に振られた記憶です。僕は彼女に振られて以来、何にも手がつかなくなってしまったんです。その記憶さえなくなれば、自分はもっとまともな人間になれるんじゃないかって、そう思うんです」

「あなたが言いたいことはとてもよく分かるけれど・・・。まあそうね、記憶を消すっていうのがどういうことか、実際にやってみるのが速いわね」

その女性はそう言うと透明なタッチパネルを操作し始めた。そしてしばらくしてその女性は「よし、できたわ」と言うと何かのデータをタッチした。

その瞬間、僕の目の前が真っ暗になった。

「あら、データが重くてフリーズしちゃったわ。データが壊れてしまわないようにちょっと手を加えておきましょうね」

目が覚めて、なんて嫌な夢を見てしまったんだろうと思った。僕がナオに振られるなんて、そんなわけがないじゃないか。僕は布団から手を伸ばしてスマホを取った。そしてナオにLINEで「何か変な夢見たんだけどw」と送った。それから身支度を整えると、いつもと同じように会社へと向かった。

仕事中、何度かLINEをチェックしたけれど、ナオからの返信はなかった。おかしいな、いつもならすぐに返信が来るのに。そう思いながらも僕は大して気にも留めずに仕事に取り組んだ。そして、今週末はナオとどこに行こうかと考えた。そうだ、確か今週の金曜は自衛隊の花火大会があるからそれに行こう。そう言えばまだ今年の夏の予定について何も話してなかった。今週はずっと天気も良さそうだし、きっと楽しいに違いない。

そんなことを考えながら一日を過ごした。しかしいつまでたってもナオからは何の返事もなかった。何かあったんだろうか? 会社から自宅へ帰る途中、LINEで「何かあったの?」と送信した。

・・・しかし、そのとき僕は気づいてしまった。ナオとの最後のLINEが3年前の日付になっている。僕は目まいがした。これはいったいどういうことだ? 僕はナオとの記憶を必死に手繰り寄せた。しかし、いくら考えても3年前から僕はナオと一度も会っていない。全身から嫌な汗が出るのを感じた。体がブルブルと震え、今にも倒れそうになった。僕は目の前のビルのガラスに映った自分を見た。そこには真っ青な顔をした自分が映っている。

「例えばですけど、記憶のデータを一部だけ消したらどうなるのか、もう一人の自分のデータを使って試すことはできないですかね?」

僕は昨日見た夢を思い出した。

いや、まさか、そんなはずがない。しかし、そうでないとしたら今自分に起こっていることの説明ができない。

・・・僕は、コピーの記憶を消すように頼んだはずだ。もう一人の僕は、いったいどこにいるんだ?

 

 

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