仙台三題噺「宮城野原陸上競技場」「仙台弁こけし」「ティッシュ」

どうも!仙台つーしんのバラサです!

最近の仙台三題噺はやたらと長いなって思ったので今回はとにかく短くてみようと思って書いてみました!

「宮城野原陸上競技場」「仙台弁こけし」「ティッシュ」

よし、今日は貸し切りだ。トラックには誰一人いない。夕方6時過ぎの宮城野原は、昼間の暑さが嘘のように涼しく、気持ちの良い風が吹いている。軽く体を動かしてみる。よし、今日は調子が良さそうだ。思いっきり体を伸ばし、そして駆け出してみる。涼しい風と、セミの音に包まれる。これ!この感じ!

「なんか、この仙台弁こけし?っていうやつ流行ってるみたいなんだけど、こういう感じで会社のゆるキャラつくって欲しいんだよね、ほら、君若いからこういうの分かるでしょ?」

ふと昼間の上司の言葉が頭に蘇る。来月の会議でゆるキャラを使った会社の知名度向上策をまとめてプレゼンしろと言う。もちろん、その間も普段通り仕事はやらなきゃいけないし、そのために何か予算が付くわけでもない。まったく、そんな簡単にできたら誰も困らないじゃないか。思い出すだけで腹が立つ。

いやいや、ダメだ、こんなことを考えてたら走るのに集中できない。集中、集中するんだ。今日は久しぶりに1000mのタイムを計るんだ。全力で走って、余計なことを全部頭から放り去ってしまおう。

ウォーミングアップを終え、スタートラインに立つ。

「1000m行きます!」

学生時代のように、大きな声を出して気合を入れる。そして、スタートだ。最初の100mを快調に駆け抜ける。チラッと腕時計見てタイムを確認する。16秒。少し、飛ばし過ぎてしまっているかもしれない。・・・でも、今日は最高に調子が良さそうだ。このままでも行けるかもしれない。いや、行ける。自分の体が楽しんでいるのが分かる。だからきっとこのまま行けるんだ。一気に400mトラックを1周する。通過タイムは、69秒。よし、このままいけば久しぶりに1000m3分を切れそうだ。

昼休みに仙台弁こけしについて調べた。様々なイベントを行っていて、河北新報の親善大使にもなっている。Twitterで何かつぶやけば簡単に100リツイートを超える。LINEスタンプ、4コママンガ、そしてたくさんのグッズ。少し調べるだけでその人気ぶりが簡単に分かった。ゆるキャラをつくれって簡単には言うけれど、そもそもこんな風に知名度を上げるのがどれだけ難しいか、ちゃんと分かっているんだろうか? でもまあ、仮に自分がゆるキャラをつくったとして、自分でもできそうな知名度向上の方法くらいは考えてみよう。しばらく考えてみて、思いついたのはゆるキャラの絵が入ったティッシュを街中で配るくらいだった。そんなことしか思いつけない自分に、思わず笑ってしまった。

気が付いたときには600mを過ぎていた。慌てて腕時計を確認する。600m通過はおよそ146秒。まずい、一気にペースが落ちている。このままじゃ3分が切れない。あとたったの1周じゃないか。気合を入れろ、集中しろ。思いっきり肘を引いて、できる限り脚の回転を速くするんだ。思いっきり腕を振る。脚を前へと進める。800m通過は・・・、2分24秒。ダメだ、やっぱりペースが落ちている。心臓がバクバクいっている。息が苦しい。このままじゃダメだ。とにかく集中するんだ。集中、集中するんだ!

辛くてもう目も開けない。体の動きが鈍くなってる。くそ、脚が思うように動かない。やっぱり練習不足なのか?いや、それでもとにかく集中するんだ。集中、集中だ。セミの音がだんだん遠ざかる。心臓と呼吸の音だけが聞こえる。最後のカーブを抜けた。真っ直ぐ前を見ろ。ラストの直線。ここで踏ん張らずに、いつ頑張るって言うんだ?ランニングフォームはめちゃくちゃでも良い、とにかく前に進むんだ。最後の力を振り絞れ。

ゴールラインを超えた。ダメだ、もう立ってられない。倒れこんだ芝生の感覚が懐かしい。もう、立てない。そうだ、タイムは?腕時計を見る。3076。くそ、3分を切れてない。またか、またなのか。悔しい。めちゃくちゃ悔しい。

・・・でも、こうやって芝生に寝そべって見上げる空は久しぶりだ。風を感じる。耳を澄ませれば、色んなことを思い出す。7月の夕暮れ、涼しい風、セミの音、夕日に照らされたトラック。そして、高鳴る心臓と疲労感、悔しいというこの気持ち。確かに悔しいけど、これなんだよ。きっと、今の僕に必要なのはこれなんだ。僕はこの気持ちを忘れないために、何度も何度もこうやって走るんだ。

昼間の上司の言葉を思い出す。思い出すだけで腹が立つ。でも、上司の一言にイラつくようじゃダメだ。仕事でも、もっと悔しくなれよ。ティッシュ配りくらいしか思いつけないような自分をちゃんと悔しがれよ。他人にイラつくばかりじゃ何も生まれやしない。悔しい気持ちを、忘れちゃいけない。確かにイラつくけれど、僕は結果で示す人間になりたいんだ。

 

※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は実在のものとは関係ありません。

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